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東京地方裁判所 昭和61年(ワ)16156号・昭61年(ワ)16157号 判決

一 原告が、本件意匠権(一)ないし(三)を有し、その登録意匠の範囲が別紙意匠公報(一)ないし(三)に示すとおりの鉄骨用吊り足場、足場板及び足場取り付け具の形状であること、被告住友軽金属が、現在、被告製品(一)(ただし、その足場取り付け具に旧型のねじ桿を使用していることについては争いがある。)及び被告製品(二)を製造販売し、又は頒布していること、被告朝日鉄工が、被告製品(二)を貸し渡し、又は貸渡のために展示していること並びに被告製品(一)(ただし、旧型のねじ桿を使用したもの)及び(二)の意匠が別紙目録(一)及び(二)のとおりの各鉄骨用吊り足場、足場板及び足場取り付け具の形状(被告(一)及び被告(二)全体意匠、被告(一)及び被告(二)足場板意匠、被告(一)及び被告(二)足場取り付け具意匠)であることは、当事者間に争いがない。そこで、被告住友軽金属が、現在もその足場取り付け具に旧型のねじ桿を使用した被告製品(一)を製造販売しているか否かについてはさておき、被告らが原告の主張する被告製品(一)及び(二)を製造販売等する行為が、本件意匠権(一)ないし(三)を侵害するものであるか否かについて以下判断する。

二 成立に争いのない甲第一号証ないし第三号証によれば、本件登録意匠(一)ないし(三)の構成が請求の原因2のとおりであることが認められ、また、被告製品(一)及び(二)を表示するものであることについて争いがない別紙目録(一)及び(二)の記載によれば、被告(一)全体意匠、被告(一)足場板意匠及び被告(一)足場取り付け具意匠並びに被告(二)全体意匠、被告(二)足場板意匠及び被告(二)足場取り付け具意匠の構成が、請求の原因4及び5のとおりであることが認められる。右認定事実に基づき、本件登録意匠(一)ないし(三)と被告製品(一)及び(二)の右各意匠との類否について検討する。

1 被告製品(一)について

(一) 本件登録意匠(一)と被告(一)全体意匠との類否

本件登録意匠(一)及び被告(一)全体意匠は、いずれも鉄骨用吊り足場に係るものであつて、前記のとおりの構成を有するものであるから、主として、別紙意匠公報(一)の斜視図及び別紙目録(一)(1)の使用状態を示す斜視図にみられるような外観に、特に看者の注意を引く部分か現れるものということができる。そこで、右外観について両意匠を対比してみるに、(1)本件登録意匠(一)は、足場枠の前部両端部に、後側支柱とほぼ同巾の間隔で短い二本の前側支柱を枢着して起立させている(基本的構成B)のに対し、被告(一)全体意匠は、足場枠の前部両端よりやや中央寄りに、短い二本の前側支柱を枢着して起立させている(基本的構成B´)、(2)本件登録意匠(一)は、前側支柱間に、水平な前部手摺とX字状の足場枠とを設置している(基本的構成D)のに対し、被告(一)全体意匠は、前側支柱間に、水平な二本の前部手摺を設置している(基本的構成D´)、(3)本件登録意匠(一)は、後側支柱間に、二本の背部手摺を水平に設置している(基本的構成E)のに対し、被告(一)全体意匠は、後側支柱間に二本の背部手摺と一本の補強材とを水平に設置している(基本的構成E´)、(4)本件登録意匠(一)は、相対向する前側支柱と後側支柱との間に、二本の側部手摺を水平に(足場枠に平行に)枢着している(基本的構成C及び具体的構成c)のに対し、被告(一)全体意匠は、相対向する前側支柱と後側支柱との間に、二本の側部手摺を前側支柱寄りから後側支柱に向かつて足場枠の中間部 とまで足場枠に平行に、その後は、やや上向き状で後側支柱に接続している(基本的構成C´及び具体的構成c´)(5)本件登録意匠(一)は、相対向する後側支柱と前側支柱の頂部との間に、鎖の斜材を連結している(基本的構成F及び具体的構成f)のに対し、被告(一)全体意匠は、後側支柱の上部と足場枠の前部側面との間に、上部においてゆるやかめに斜め上方にふくらむように湾曲しているパイプの斜材を連結している(基本的構成F´及び具体的構成f´)、以上のような差異がある。そして、右(1)ないし(5)の差異は、看者の注意を引きやすい部分である支柱、手摺及び斜材の取り付け位置及び形状等についての顕著な差異であつて、両意匠を全体的に観察した場合、両意匠は、視覚を通じての美感を異にするものと認められるから、類似するとはいえない。原告は、本件登録意匠(一)は、折畳み式足場装置をコンパクトに折り畳む意匠構成のモチーフに基づくものであつて、その要部は、長方形の足場板並びにその付属設備である手摺、前側支柱及び斜材が後側支柱の長さの範囲内にコンパクトに格納されるように構成された機能美にある旨主張するところ、本件登録意匠(一)の創作のモチーフが原告主張のとおりであるとしても、前記本件登録意匠(一)の構成に照らすと、その要部を原告主張のとおりであると認めるに由なく、したがつて、原告の右主張は、採用することができない。また、原告は、前記相違点について、これらは、いずれも部分的な形状の微差であるか、看者が一見して看ることができないか、又は看者の注意を引かない部分に関するものであつて、全体的美感に差異をもたらすほどのものではない旨主張するが、右差異が特に看者の注意を引きやすい部分に関する顕著なものであることは、前認定のとおりであるから、原告の右主張も、採用の限りでない。

(二) 本件登録意匠(二)と被告(一)足場板意匠との類否

本件登録意匠(二)及び被告(二)足場板意匠は、いずれも足場板に係るものであつて、前記のとおりの構成を有するものであるから、主として、別紙意匠公報(二)の斜視図及び別紙目録(一)(2)の斜視図にみられるような外観並びに足場板の強度及び作業の安全性に影響のある作業床の単体の結合部及び作業床下面の突条の外観に、特に看者の注意を引く部分が現れるものと認めることができる。そこで、右外観について両意匠を対比してみるに、(1)本件登録意匠(二)は、足場板の単体である作業床が二つである(基本的構成A)のに対し、被告(一)足場板意匠は、作業床が五つであり(基本的構成A´)、(2)本件登録意匠(二)は、足場板の単体である二つの作業床の一方の作業床にJ字状の溝部を、他方の作業床に右溝部に引掛け固定をするかぎ状突出部を長手方向に沿つて設け、両者が嵌合している(基本的構成C及び具体的構成e)のに対し、被告(一)足場板意匠は、巾木を有する左右二つの作業床のそれぞれの他外端に、作業床下方にL字状の溝部を設けるとともに、当該作業床の中間部に、<省略>状の補強突起をそれぞれ一つ(合計四つ)設け、他の二つの作業床の一端にL字状の溝部を、他端に<省略>状の引掛部を設け、かつ、その作業床の中間部に<省略>状の補強突起をそれぞれ一つ設け、その余の作業床の両外端に、ともに<省略>状の引掛部を設けて、右五つの作業床を密に嵌合している(基本的構成C´及び具体的構成e´)、以上のような差異があり、その結果、本件登録意匠(二)は、作業床の両外端に巾木を、また、作業床の底面の中央部に長手方向に沿つて低い突条をそれぞれ設けているように見え、全体的に比較的単純平明で簡素な印象を看者に与えるのに対し、被告(一)足場板意匠は、作業床の両外端に巾木を、また、作業床の底面の両巾木間に等間隔に長手方向に沿つて合計八本の比較的巾の広い突条をそれぞれ設けているように見え、全体的に強度と厚みのある印象を看者に与えるものであることが認められる。そして、右の差異は、特に看者の注意を引きやすい部分についてのものであつて、両意匠を全体的に観察した場合、両意匠は、視覚を通じての美感において異なつた印象を与えるものというべきであるから、類似しているとは認められない。原告は、本件登録意匠(二)の要部は、(イ)モチーフの原型である別紙参考図(一)にみられるような構成、(ロ)足場板の作業床の表面に、別紙参考図(二)のとおりの多数の滑り止め用の<省略>形(断面載頭円錐形)突起が列設されている構成、(ハ)足場板を二枚(二つの単体)の結合として考え、その結合部を足場板の下面に設けた構成に存するのに対し、被告(一)足場板意匠の要部も、右の(イ)及び(ロ)と全く同一の構成にあり、また、右の(ハ)の構成と同じように、足場板を五枚(五つの単体)の結合として考え、その結合部を足場板の下面に設けた構成にあるから、両意匠は類似する旨主張するところ、たとい、本件登録意匠(二)の要部が右(イ)ないし(ハ)の点にも存するとしても、前記本件登録意匠(二)及び被告(一)足場板意匠の構成並びに両意匠の前示差異に照らし、右(イ)ないし(ハ)の点においてほぼ同一であることから直ちに両意匠は類似するものと認めることは困難であり、したがつて、原告の右主張は、採用することができない。また、原告は、(イ)足場板の意匠は、全体としての統一された美感を重視するものであるから、その単体が二つであるか五つであるかは、全く問題とする余地がなく、(ロ)足場板の単体の結合部の形状と数の差異は、単に足場板の結合方法の問題であり、(ハ)<省略>状の補強突起(脚部)の有無も、単なる足場板の補強の問題であり、また、右(ロ)及び(ハ)の部分は、本件登録意匠(二)に付加したものにすぎず、足場板全体の審美性に特徴的差異をもたらす程度のものではなく、しかも、右部分は、足場装置の通常の使用状態では、構枠によつて隠れてしまい、看者の目に触れることがないから、全体的な対比観察をすれば、両意匠は、類似すると判断せざるをえないものである旨主張するが、前記(1)及び(2)の相違点は、特に看者の注意を引きやすい部分についてのものであつて、両意匠を全体的に観察した場合、両意匠は、視覚を通じての美感において異なつた印象を与えることは前認定のとおりであり、また、足場装置の使用方法に鑑みれば、その通常の使用状態で右部分が看者の目に触れることがないとはいえないことが明らかであるから、原告の右主張も、採用の限りでない。

(三) 本件登録意匠(三)と被告(一)足場取り付け具意匠との類否

本件登録意匠(三)及び被告(一)足場取り付け具意匠は、いずれも足場取り付け具に係るものであつて、前記のとおりの構成を有するものであるから、主として、別紙意匠公報(三)の使用状態を示す参考図及び別紙目録(一)(3)の使用状態を示す参考図にみられるような外観に、特に看者の注意を引く部分が現れるものということができる。そこで、右外観について両意匠を対比してみるに、両意匠の基本的構成は、足場取り付け具の部材を表示するにすぎず、必ずしもその外観を表示するものとはいえないから、両意匠がその基本的構成において同一であることから直ちに両意匠は類似するとの結論を導くことはできない。そこで、更に、両意匠の具体的構成の異同について検討するに、(1)本件登録意匠(三)は、具体的構成aにみられるとおり、ねじ桿本体は、長いねじ部と、ねじ部の端部に一体に設けたロツド状の基部と、その基部の端部が二又状に分かれた支持片とからなり、取り付け部は、二又状支持片間に挿入した六角ボルト及びこれに取り付けた六角ナツトからなるのに対し、被告(一)足場取り付け具意匠は、具体的構成a´にみられるとおり、ねじ桿本体は、長いねじ部と、ねじ桿の端部に固定した六角ナツトと、六角ナツトに固定したコ字状支持片とからなり、取り付け部は、コ字状支持片間に挿入した六角ボルト及びこれに装着する六角ナツトからなるものであり、また、(2)本件登録意匠(三)は、具体的構成bにみられるとおり、フツクの平面側がテーバー状で、その背面が四半円状の形態であり、フツクの両面に三つのリブが形成されているのに対し、被告(一)足場取り付け具意匠は、具体的構成b´にみられるとおり、フツクの平面側がテーバー状であるが、その背面が四半円状をカツトした形態、すなわち、直角の隅を直線で隅切りした形態で、フツクの両面が無模様であることが認められる。そして、右の差異は、特に看者の注意を引きやすい部分についてのものであつて、両意匠を全体的に観察した場合、視覚を通じての美感において異なつた印象を与えるものであるから、両意匠は、類似しないものといわざるをえない。原告は、両意匠は、基本的構成を同一にするものであるから、類似するものであり、また、右(1)及び(2)の差異は、基本的構成に付随する付加的なものにすぎず、右差異によつて全体的な審美性に格別顕著な差異を生じさせるものではない旨主張するが、この点については前説示のとおりであるから、原告の右主張は、採用の限りでない。

2 被告製品(二)について

(一) 本件登録意匠(一)と被告(二)全体意匠との類否

被告(二)全体意匠の構成は、前示のとおり、二本の側部手摺は、平板状パイプをL字状にし、かつ、前側支柱寄りから後側支柱に向かつて、やや上向き状でそのまま後側支柱に接続している点(具体的構成c´)、二本の背部手摺及び一本の補強材は、いずれも断面C字状であり、その一本の背部手摺は、後側支柱の上部間に凹部を前向きに、他の一本の背部手摺は、前記背部手摺とは逆向きで中間の側部手摺よりやや下部の位置に、また、補強材は、足場枠のやや上部の位置に凹部を前向きにそれぞれ設置されている点(具体的構成e´)及び部材は、断面L字形で、Lの頭部分に丸いふくらみをもつた長い上部材と短い下部材をピンで結合している点(具体的構成f´)を除き、被告(一)全体意匠の構成と同一であるから、本件登録意匠(一)と被告(一)全体意匠との類否についての前説示は、本件登録意匠(一)と被告(二)全体意匠との類否についてもそのまま妥当するものであり、したがつて、被告(二)全体意匠も、本件登録意匠(一)に類似しないというべきである。

(二) 本件登録意匠(二)と被告(二)足場板意匠との類否

被告(二)足場板意匠の構成が被告(一)足場板意匠の構成と同一であることは、前示のとおりであるところ、被告(一)足場板意匠が本件登録意匠(二)に類似しないことは、前説示のとおりであるから、被告(二)足場板意匠もまた、本件登録意匠(二)に類似しないというべきである。

(三) 本件登録意匠(三)と被告(二)足場取り付け具意匠との類否

被告(二)足場取り付け具意匠の構成は、前示のとおり、ねじ桿本体は、長いねじ部、ねじ桿本体のねじ桿取り付け部近傍部にねじ桿本体の約六分の一ほどの長さにわたつてねじを切つていない丸棒状部、ねじ桿の端部に固定した六角ナツト及びこれを装着する(具体的構成a)点を除き、被告(一)足場取り付け具意匠の構成と同一であるから、本件登録意匠(三)と被告<省略>、本件登録意匠(三)と被告(一)足場取り付け具意匠との類否についての前説示は、本件登録意匠(三)と被告(二)足場取り付け具意匠との類否についてもそのまま妥当するものであり、したがつて、被告(二)足場取り付け具意匠も、本件登録意匠(三)と類似しないというべきである。

三 以上によれば、原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がないものといわざるをえない。よつて、これを棄却する。

〔編注1〕本件における請求原因は左のとおりである。

原告は、次の(一)ないし(三)の意匠権(以下順次「本件意匠権(一)」、「本件意匠権(二)」及び「本件意匠権(三)」といい、その登録意匠を順次「本件登録意匠(一)」、「本件登録意匠(二)」及び「本件登録意匠(三)」という。)を有する。

(一) 意匠に係る物品 鉄骨用吊り足場

出願      昭和四九年一二月三〇日

登録      昭和五三年一〇月一三日

登録番号    第四九二五一〇号

登録意匠の範囲 別紙意匠公報(一)表示のとおり

(二) 意匠に係る物品 足場板

出願      昭和五〇年九月一九日

登録      昭和五五年一月三一日

登録番号    第五二九三九五号

登録意匠の範囲 別紙意匠公報(二)表示のとおり

(三) 意匠に係る物品 足場取り付け具

出願      昭和五〇年九月二二日

登録      昭和五二年三月一五日

登録番号    第四五一五〇一号

登録意匠の範囲 別紙意匠公報(三)表示のとおり

(以下省略)

〔編注2〕本件における別紙目録は左のとおりである。

目録(一) (1)鉄骨用吊り足場

<省略>

(中略)

(2) (1)に使用されている足場板

<省略>

(中略)

(3) (1)に使用されている足場取り付け具

<省略>

(中略)

目録(二) 鉄骨用吊り足場

<省略>

意匠公報(一)

492510 出願 昭49.12.30 意願 昭50―702 登録 昭 53.10.13

意匠に係る物品 鉄骨用吊り足場

説明      左側面図は右側面図と対称にあらわれる。

<省略>

<省略>

529395 出願 昭50.9.19 意願 昭50―37996 登録 昭55.1.31

意匠に係る物品 足場板

説明      本物品は、二つの単体からなり、各単体の外端には上下に起立する巾木を設け、又表面には長手方向に沿つて多数の滑り止め用突起を列設し、更に一方の単体の内側下部には溝部を長手方向に沿つて形成し、他方の単体の内側下部に設けた引掛部材が上記溝部に嵌合して二つの単体を水平に連結してなる建築、土木、造船用吊り足場装置の作業床に使用される金属製足場板である。図面中、右側面図、平面図、底面図は4cm2mm省略してある、背面図は正面図と対称にあらわれる、左側面図は右側面図と同一にあらわれる。

<省略>

意匠公報(S)(二)

<省略>

意匠公報(三)

451501 出願 昭50.9.22 意願 昭50―38520 登録 昭52.3.15

意匠に係る物品 足場取り付け具

<省略>

<省略>

(以下省略)

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